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傷病手当金、資格喪失後も継続給付される?条件を解説
病気やケガで会社を退職することになり、傷病手当金を受給していた場合、「退職したらもうもらえないの?」と不安に思われる方もいるのではないでしょうか。傷病手当金は、一定の条件を満たせば、退職後(資格喪失後)も継続して受給できる場合があります。
この記事では、傷病手当金の制度概要から、資格喪失後も継続給付を受けるための条件、手続き、注意点などをわかりやすく解説します。「もしかしたら自分も対象かも?」と思ったら、ぜひ最後まで読んでみてください。
傷病手当金とは?制度の概要をわかりやすく解説
まず、傷病手当金とはどのような制度なのでしょうか?簡単に言うと、病気やケガで会社を休まざるを得なくなった場合に、健康保険から支給される手当金のことです。
傷病手当金の支給要件
以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
1. 業務外の事由による病気やケガであること:仕事中や通勤中の事故など、労災に該当する場合は対象外です。
2. 仕事に就けない状態であること:医師の診断が必要です。
3. 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けないこと:最初の3日間は「待期期間」となり、傷病手当金は支給されません。
4. 給与の支払いがないこと:給与が支払われている場合でも、傷病手当金の額よりも少ない場合は、差額が支給されます。
傷病手当金の支給期間
支給開始日から最長1年6ヶ月間です。ただし、1年6ヶ月を超えても、症状が回復しない場合は、障害年金などの他の制度を検討する必要があります。2022年1月1日より支給期間の考え方が変わり、「支給開始日から通算して1年6ヶ月」となりました。これにより、一度症状が回復して仕事に復帰し、再び同じ病気やケガで休むことになった場合でも、合計で1年6ヶ月まで傷病手当金を受け取れるようになりました。
傷病手当金の金額
1日あたりの支給額は、以下の計算式で算出されます。
(支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×(2/3)
簡単に言うと、標準報酬月額の約67%が支給されることになります。標準報酬月額とは、給与などの報酬を区切りの良い幅で区分したもので、健康保険料や厚生年金保険料を計算する際に用いられます。
資格喪失後も傷病手当金が継続給付される条件
さて、本題です。退職後も傷病手当金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
継続給付の2つの条件
1. 退職日(資格喪失日)までに被保険者期間が継続して1年以上あること:つまり、1年以上継続して健康保険に加入している必要があります。
2. 退職日(資格喪失日)に傷病手当金を受給しているか、または受給要件を満たしていること:退職日に仕事に就けない状態であり、かつ、傷病手当金の支給要件を満たしている必要があります。
これらの条件をすべて満たせば、資格喪失後も、支給開始日から最長1年6ヶ月まで傷病手当金を受け取ることができます。
退職日と傷病手当金の関係
退職日に傷病手当金を受給している、または受給要件を満たしている必要があるため、退職日をいつにするかは非常に重要です。例えば、退職日に体調が回復してしまい、仕事に就ける状態になってしまった場合、継続給付を受けることはできません。
退職日を決める際には、医師と相談し、傷病手当金の受給要件を満たしているかどうかを慎重に判断するようにしましょう。
任意継続被保険者の場合
退職後も健康保険に任意継続した場合、傷病手当金は支給されません。任意継続被保険者は、退職前の健康保険を継続する制度ですが、傷病手当金や出産手当金は支給対象外となります。
継続給付を受けるための手続き
継続給付を受けるためには、以下の手続きを行う必要があります。
申請に必要な書類
1. 健康保険傷病手当金支給申請書:健康保険組合や協会けんぽのホームページからダウンロードできます。
2. 医師の診断書:仕事に就けない状態であることを証明する診断書が必要です。
3. 事業主の証明:退職日や給与の支払い状況などを証明してもらう必要があります。退職した会社に依頼しましょう。
4. 受給者の本人確認書類:運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど。
5. 受給者の預金口座情報:傷病手当金の振込先となる口座情報が必要です。
申請書の書き方
申請書には、病名、症状、仕事に就けない理由、療養の状況などを詳しく記入する必要があります。医師の診断書を参考にしながら、正確に記入するようにしましょう。
申請先と申請期間
申請先は、加入していた健康保険組合または協会けんぽです。申請期間は、仕事に就けなかった日の翌日から2年以内です。ただし、時効によって受け取れなくなる場合があるため、早めに申請するようにしましょう。
傷病手当金と他の制度との関係
傷病手当金は、他の制度との関係も理解しておく必要があります。
失業保険との関係
傷病手当金と失業保険は、同時に受け取ることができません。失業保険は、働く意思と能力があるにもかかわらず、仕事が見つからない場合に支給されるものなので、病気やケガで働けない状態では受給資格がないためです。
ただし、傷病手当金の受給期間が終了した後、働くことができる状態になった場合は、失業保険を受給することができます。
障害年金との関係
傷病手当金と障害年金は、原則として同時に受け取ることができます。ただし、障害年金の額によっては、傷病手当金の額が調整される場合があります。
労災保険との関係
業務中や通勤中の事故など、労災に該当する場合は、傷病手当金ではなく、労災保険から給付を受けることになります。
傷病手当金に関する注意点
傷病手当金を受給するにあたって、注意すべき点があります。
受給期間中のアルバイト
傷病手当金は、仕事に就けない状態であることを前提に支給されるものなので、受給期間中にアルバイトをすることは原則として認められません。もしアルバイトをして収入を得ていた場合、傷病手当金の支給が停止されたり、返還を求められたりする可能性があります。
ただし、医師が認めた範囲内で、症状に影響のない程度の軽いアルバイトであれば、認められる場合もあります。事前に健康保険組合や協会けんぽに相談するようにしましょう。
受給期間中の転職
傷病手当金の受給期間中に転職した場合、転職先の健康保険に加入することになります。この場合、傷病手当金の継続給付は打ち切られます。
不正受給
不正な手段で傷病手当金を受給した場合、詐欺罪に問われる可能性があります。例えば、仕事ができる状態なのに、嘘の申告をして傷病手当金を受給したり、アルバイト収入を隠して傷病手当金を受給したりする行為は、不正受給にあたります。
傷病手当金に関するFAQ
最後に、傷病手当金に関するよくある質問とその回答をまとめました。
傷病手当金はいつまで受けられる?
支給開始日から最長1年6ヶ月です。
傷病手当金の申請期間は?
仕事に就けなかった日の翌日から2年以内です。
傷病手当金に関する相談窓口は?
加入している健康保険組合または協会けんぽに相談してください。
傷病手当金の最新情報はどこで確認できる?
厚生労働省のホームページや、加入している健康保険組合または協会けんぽのホームページで確認できます。
まとめ
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった場合に、生活を支えてくれる大切な制度です。退職後も継続給付を受けられる可能性があることを知っておけば、安心して療養に専念することができます。
この記事が、傷病手当金について理解を深め、適切な手続きを行うための一助となれば幸いです。もし、ご自身が対象になる可能性があると感じたら、まずは加入している健康保険組合や協会けんぽに相談してみることをおすすめします。
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